表記学会に出席するため福岡に行ってきました。
今回の学会のテーマを「日本の口腔外科のグローバル化を目指して」とし、数多くの特別講演、シンポジウム、教育講演が準備され、最新のがん治療や再生医療、そして歯科の将来の展望について話し合われていました。

その中で医科歯科連携を今後どのように進めていくべきか、すなわち一人の患者様が放った要求を医科と歯科が連携して叶えて行くにはどのような連携が必要か?今までであれば例えば医科がやるべき事はすべてやった、後は歯科任せ、またはその逆もあり、なかなか患者様のかゆい所に手が届かない事が多く見られました。

また有名な話ですが、心臓の人工弁置換術を受けた患者様が心内膜炎を起こし、その原因菌を突き止めたら口腔内細菌であったとか、口腔以外の疾患で手術を行う時、前もって口腔ケアを行う事により術後の経過が左右される事などは周知の事となってきました。
このような連携をさらに進めるためには、我々歯科医はさらに基礎医学を学び、医師は歯科を学ばなければならず、その出発点は学生の教育プログラムに始まり、厚生労働省だけでなく文部科学省も一体となり推し進めていく必要があると決論づけられていました。

今後我々は、歯医者(歯だけを診る いわゆる はいしゃ )ではなく、患者様を取り巻く医療スタッフの一員としての歯科医師(しかいし)として医科歯科連携を推し進め、基礎医学を学び、歯科以外の疾患に理解を深め、その中で歯科医師として何が出来るかを考えていかなくてはいけないと感じました。

もう1つの話題、最新のがん治療のお話し。
もちろん再生医療についてもたくさんの演題があり、色々聞かせて頂きました。
まさに今世紀最大の発明と言われ、この世に生まれたiPS細胞。
これにより今までになく最速の進化を遂げようとしている研究。話題は尽きません。大好きです、この分野。
でもあえて最新のがん治療についてほんの少し書かせて頂きます。

癌の分子標的治療について。
正常な体と病気の体の違い、あるいは癌細胞と正常細胞との違いをゲノムレベルや分子レベルで解明し、癌の増殖や転移に必要な分子を特異的に抑える治療法で、従来からの多くの治療薬もその作用機序を探ると何らかの標的分子を持ちますが、この分子標的治療は薬を作る時点や、治療法の設計の段階から分子レベルの標的を定めている点で従来の方法とは違います。
「いったいなんのこっちゃ?」
現在のがん治療の専門的な知識に乏しい私にとって、この講演を聞いて感じた言葉がそれでした。
約20年前、がん治療の戦線からしりぞいた私にとって、従来からの抗がん剤は耳の奥底に音として残っていますが、今をときめく分子標的治療薬の名前は耳には新しく、同時に入ってくる標的分子の名前や、ゲノムの名称は異星人の言葉の様に聞こえ、なんとなく「気持ちはわかるんだけど・・・」で、最初の言葉に戻りました。
でもわかった事はこの20年で癌治療は飛躍的に進化した事で、癌は治る病気になったと言う事でした。
この講演を聞きながら、中東での戦争で、巡航ミサイルトマホークが次々と発射されていく映像を思い浮かべていました。
私が現役でいた頃は、大きな大陸間弾道ミサイルの弾頭に何メガトンもの核爆弾を搭載し、敵国にミサイルを撃ち込み軍事施設だけでなくその国自体をも焼土とかす、そんな戦いだったのだと。
癌を無くそうとすると、その宿主である人にまで損害が及ぶ、ジレンマの連続であったと。

でも今は違う!
GPSや衛星写真の情報で完全にプログラミングされたミサイルが確実にピンポイントで敵の軍事施設を狙い、確実に破壊し、その機能を奪う。
現在のがん治療は完全に近代戦へと変化していると実感しました。

今回学会に出席して色々と新しい事を学ぶと共に、歯科医療としての基本的な事、そしてその歴史的変遷の再確認が出来た事は、今後の診療に大変役に立つように感じました。

最後に余談
福岡に行ったという事で、もちろん「稚加栄の辛子明太子」を求め、おいしくいただいたのは言うに及ばずですが、今回初めて写真の「博多通りもん」を買い求めて見ました。映画「のだめカンタービレ」で確か出てきたと思いますが、とても甘くておいしいお菓子でした。
「一度、お試しあ~れ!」

寺辺 勝之

寺辺歯科医院