先日、歯髄細胞バンク認定医講習会に行ってきました。
歯髄細胞?バンク?聞きなれない言葉が出てきて、新しい銀行でも出来たの?
正直なところ最初はそうかもしれませんよね。

少し考えてみましょう。
歯髄って?そう、歯の神経の事、と言う事は歯髄細胞とは歯の神経の細胞の事ですよね。
そのような細胞を保存しておいてどうするの?
でもなんだか匂ってきませんか?何の臭いでしょうか?
頭の片隅に、ノーベル賞、京大山中教授、iPS細胞、再生医療なんて言葉か浮かんできたら大正解です。

近年の再生医療の発展は目を見張るものがあります。
ほんの1個の細胞からでも体の色々な臓器の細胞に変化させる事が
出来るようになりました。
すごい事が出来る時代になりましたね。

ただこのように進歩した中でもiPS細胞から色々な細胞に分化させるには難しい面もあり、
また時間とコストもかかることからそのスピードも鈍いものとなっている事も否めません。
そこで、iPS 細胞からではなく自分の細胞から同じような方法をもって、
自分のために色々な細胞に分化させ、それを自分の病気の治療に使用しようとする考えがあります。
では自分の細胞を何処から持ってくればよいか?と言う事になります。
基本的には何処からでも良いのですが、そのためには体に傷をつけなくてはいけません。
いくら病気治療のためとはいえ、健康な部位に傷を付けるのはいかがなものかと言う事になります。
今ではあたりまえの様に行われている生体臓器移植、始まった頃にはいくら治療のためとは言え、
健康な体に傷を付けると言う事に医療倫理を問う声が多かった事が思い出されます。

そこで考えられたのが再生能力の非常に高い歯髄細胞です。
でも病気治療のためとはいえ、健康な歯を抜いて歯髄を採取してはそれこそ医療倫理が問われますが、
どうにかうまく健康な歯髄が手に入らないでしょうか。

そこに抜けて、もしくは抜いても当然の歯があれば良いのですが・・・・。
例えば乳歯の歯髄はどうでしょう?
乳歯は必ず永久歯にはえ換わります。
その時、乳歯の歯髄が歯に付いて抜けてきます。
これを使用してはいかがでしょう。
まだありますよ。

親知らずの歯髄はいかがでしょう?
うまくまっすぐにはえてきた親知らずはよいのですが、
斜めにはえてきてしっかりとはえきらず、歯肉にもぐっている親知らずで、
そのために清掃が行きとどかず、虫歯や歯肉炎を起こしている親知らず。
こうなると抜くしかありませんよね。

そうして抜かれた親知らずの歯髄。
また、歯列矯正のため残念だけど便宜的に抜歯された歯の歯髄。
これらがその候補になるとは考えられませんか。

こうして得られた健康で倫理的に採取が許された歯髄を歯ごとになりますが冷凍保存し、
必要な時が来たらその細胞を利用し、必要な臓器の細胞に分化し使用する。
と言うのが歯髄バンクのコンセプトであります。

例えば小学生の時、永久歯生え換わる時に抜けた乳歯の歯髄であったり、
大学生の時やむなく抜いた親知らずの歯髄を保存しておく事で、その後、
心臓疾患に罹患し、心筋の再生が必要になった時は、その歯髄細胞から心筋細胞シートを作製し、
心臓に移植する事で失った心筋の機能を再生させる事が出来ます。

この様に、再生医療の発達は、現在そのスピードを加速させ、
近い将来どのような臓器でもその臓器の失われた機能を再生させる事が出来るようになると考えられています。

もちろん、この歯髄細胞バンクで歯髄を保存するためには経費を要しますが、
将来の健康寿命のための投資と考えればよいのかもしれませんね。

興味のある方は(日本歯科大学 歯髄細胞バンク)で検索、もしくは当院にご連絡ください。
ただしこの分野は他にも同じような事を行っている企業もあります。

情報によく注意して、しっかりと理解したうえでご参加ください。

院長  寺辺勝之

寺辺歯科医院